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一つの世界

これもまた一つの世界

涕は雨の夜に溶け行く夢のごとし 零れ落ちては消え行けど、隠しきれずに溢れ出づれば拾ひ 慟哭は静けきを破れど、心は声をあげず 惑ひは埋もれ、願ひはやみ、残るは偽りの温度のみ

コマ

ただ同じところを回っている 螺旋階段のように上下するでもなく ただそこで回って止まる そしてまた回される ひたすら変わらぬ景色を眺め やがて飽きて止まってしまう 誰が回し続けるんだろうか どうして回り続けているのか そんなことは一切わからずに 理想…

あったか冬籠り

冬は寒い。寒いから冬。そんなことを気にするようになったのはいつからだろうか。よく覚えていない。いつものように玄関を出た僕を唯一見送ってくれるのは、すぐに消えてしまうドアの閉まる音。ひたすら乾燥していた。目の前を横切る道。たくさんのアパート…

雪に降られていたい

雪の井の頭公園を散歩する。スーツケースを引きずって。傘を差して。落ち葉の群れと留め置かれたボートの連なり。曲がりくねった池を囲む道はひた寂しく、濡れた木製の椅子も人恋しさを連れてくる。手袋のない両手が冷たい。木々の静けさは耳に染み入る。ふ…

野性を見る

大自然の中、濁る川の中、蜘蛛の巣の中。 この川の中にはさまざまの野生がいるらしい。 内臓だけを喰らうもの、一同に介し何もかも喰らい尽くすもの、丸めて一飲みにしてしまうもの。 これはまさに品がなくて美しい世界だ。資本主義特有の美しさだ。 あゝ、…

強く生きよ

孤高の天使のその化身 傷を負っても知らぬふり 気高き正義の存在は 小さな国の王様よ 人に愛され媚びを売り 獲物を見つけ手を伸ばす 勝手気ままな自由さも 許される身は羨まし 逃げて隠れて生き抜いて 保健所だけは免れた 嫌われ続けるその主は いつかの僕の…

未来

宵闇に染まった街で、彼とぶらぶらと話し、歩いていた。大学生の騒ぎ声がする。月は雲に隠れ、ぼんやりとしか光を送らず、行く先を照らすのはほぼ人家と街灯の明かりのみ。ときにぼんやりと同じ角度で光に向かって旋回し続ける虫を眺め、ときに車のヘッドラ…

ある人

腸(はらわた)を裂いて笑う君を ぼんやり熟視り(まもり)生きていた やがて痛みもなくなって 笑いながら眺めていた いつの間にか時は流れ そして君は居なくなった 取り残された僕は一人 血潮の熱に気付かされた