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一つの世界

これもまた一つの世界

よどみにうかぶうたかたは

 負け犬を聞いている。優雅だ。優雅な夕方には読書が似合う。読書をしながら紅茶を飲む。英国人か。英国人かぶれか。僕は日本人だからそんなことはしない。僕にとって優雅な夕方はぼーっとして思索に耽っている夕方だ。そこには何もない。ただ座っていても良いし、寝転んでいても良い。そしてこれは確かに僕にとって優雅だけど、だとしたら僕はそんなに優雅な夕方が訪れなくても良いと思っているかもしれない。我ながら変な人だ。

 僕は普段絵を描かないから、人が絵を描くのを見ているのも変な気分だ。そしていい加減音楽がうるさいと感じる。好きな音楽であろうと考えようとするときに紛れ込んでこようとするのは許されない。いや、これは僕のせいだ。本当に深く入り込めば音楽というのはまったく感じなくなる。経験上それを知っている。

 負け犬を聞いているのは確かに優雅な夕方だけど、実際はそれを聞きながら聞かずして思考の世界を彷徨っているのが楽しいだけだ。それが優雅なだけだ。紅茶を飲んで読書をしても、実際は本の世界に沈んでいるのがおもしろくて、そこにどうでもいい外から見た自分を意識して、それを優雅だと言っている。やはり僕は英国人とは違うらしい。高い買い物をしてその値段の高さに媚びを売るタイプの人種ではないらしい。むしろそこにその手のいやらしさを感じてしまう。僕は質素に簡素に生きたい。金は要らない、生活がまともなら、そしてある程度楽しめれば、他はドブに捨てたい。

 色塗りは少しずつ色を重ねていって完成していく。少しずつ暖かくなっていく。僕はいつもたくさんの欠片を作って、それを散らばらせておくだけの人間だ。誰かがそれをつなぎ合わせて補完してくれないと完成できない絵だ。そんなことを思い始めている今、音楽が長い間止んでいた。これだ、これが僕にとっての優雅な時間だ。はてさて、あなたにとっての優雅はどちら様?