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一つの世界

これもまた一つの世界

ほのかにうちひかりていくもをかし

何にも考えていない

 世界が泣きそうになっていたから、どうしたらいいかわからなくておどおどしていた。どうして泣きそうになったかもわからない。それをなんとなく外から観測していて、気づいたらそんな感じになっていて、不安定な人なんじゃないかと思って変な気分になった。僕は多分ふわふわしている人間だけど不安定ではない。だからこそこの世界の急変に対してクエスチョンマークをたくさん浮かべた。

 いつか見た光景を思い出した。小学校の校庭。良い思い出は先には浮かんでこない。たくさん潜り抜けて、少しだけ見つけられたかな、と思った。そんなに悪いことばっかりじゃなかったはずなんだけど。どうしてこうなっちゃうんだろう。これは誰のせいでもないし、僕の中で答えは出ている。でもそれは何の慰めにもならないから。だから今、良いことを増やしていきたいんだ。

 僕は好きな人と他愛もないことを話しているときが一番好きだ。ウィットに富んだ会話なんかじゃなくたっていい。出かけるのは好きじゃないけど、好きな人とどこかに行くのは好きだ。それはただ好きな人と一緒にいるのが好きなだけだ。僕の今の境遇は別に悪いものじゃない。実家に帰ってきて普通に過ごしている。誰とも話さない日もなくなった。穏やかに暮らせていると思う。それでも物足りないと感じるのは、きっと僕がどこまでも傲慢な存在だからだ。おそらく人がもっと上へと願ってしまうのは仕方のないことだけど、自分の限界を知らないといけない。身のほど知らずは身を亡ぼすからいつも弁えていたい。ずっとそう思っていた。僕は高校時代が自分の一生で一番幸せだと感じていたから、きっとどこまでも上へは目指さないで済む。それでも、僕の夢には一生届かないのはわかっているから、ずっと上へ上へと思いを馳せることになるのだろう。それじゃあ結局飽くなき欲求を追い続ける人と何も変わらない。

 ―そうか。僕のこの虚しさはどこまでも欲求を追い続けている人のそれと同じなのか。僕は天井を知っていると思っていたけど、結局永劫辿り着けないそれなら、天井を知らない人とまったく同じなんだ。なるほど。

 僕はふと椅子から立ち上がり、ジャンプして天井にタッチした。跳べばあるいは一瞬だけ届くかもしれない。でも。でも、僕が欲しいのはそんなものじゃないんだ。